嘘婚―ウソコン―
 * * *

彼女が相手の男と一緒に出て行った翌日、両親が家を訪ねてきた。

「――すみません!」

家につくなり、両親は謝罪の言葉を言って土下座した。

土下座する彼らを、陽平は両親と一緒に眺めていた。

「私たちの不注意のせいで、周様ご家族にご迷惑をかけて!」

父親の方は殺されるかも知れないと言う勢いで言葉を述べている。

そうかも知れないなと、陽平は思った。

自分の家は“経済界の首領”と言われるくらいの大会社『周財閥』なのだから。

その顔に泥をぬったものだから、大変だ。

「まま、落ち着いてください」

「そうですよ、顔をあげてください」

自分の両親が何度そう言っても、相手の両親は決して顔をあげなかった。

地面に顔をこすりつけるように頭を下げている2人に、両親は何度も慰めていた。

陽平はその光景を黙って見つめていた。

両親のように2人を慰めることができなければ、2人にかける罵倒の言葉も出てこなかった。
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