嘘婚―ウソコン―
「――俺は何だったんだよ…!」

そう呟いても、彼女が帰ってきてくれる訳じゃない。

自分のところに戻ってきてくれる訳じゃない。

虚しい思いが躰の中を回っていた。

欲しいものがあったら、お金で買えた。

何でも買ってもらえた。

けど、今回はそうじゃなかった。

どんなにお金があっても、欲しいものは手に入らない。

どんなに育った場所が裕福であろうと何であろうと、欲しいものは入らない。

彼女の心は、自分のものにはならなかった。

彼女の心は、手に入ることができなかった。

 * * *
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