嘘婚―ウソコン―
その頃、千広はグラスにビールを注ぐ指導をされていた。

「もう少しグラスを傾けて…そうそう、それでレバーを前に引いて」

大前に指導されながら、千広はグラスにビールを注いだ。

グラスが黄色い液体で埋まった。

「ストップ、今度はレバーを反対の方に」

そこから白い泡が出てきた。

「はい、ストップ」

液体が7、泡が3の比率のビールの完成だ。

ビールが入っているそのグラスを大前に渡した。

20歳だから千広も飲めると言えば飲めるのだが、ビールのような苦いお酒はまだ苦手だ。

「うん」

大前が飲み始めると、千広は時計に視線を向けた。

「…6時30分だ」

千広はそう呟いた。
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