嘘婚―ウソコン―
頭のいい彼女は、もう気づいてしまったかも知れない。

だけど、とりあえず笑った。

「ヒロが俺に離婚を要求した時みたいに、あの時の俺もプライドを捨てればよかった。

俺にバツがつこうが、周の世間体が悪くなろうが、そうすればよかった。

でもあの時の俺には…どうしてもそれが浮かばなかった。

若かったからかな?

彼女に裏切られたって言うショックが大きくて、何も考えられなかった」

話が終わったと言うように、陽平は唇を閉じた。

流れたのは、沈黙。

それを破ったのは、
「――離婚、してくれませんか?」

千広だった。

それに対して、陽平は首を傾げた。

「あなたの復讐を止めるためにも、離婚したいんです」
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