嘘婚―ウソコン―

*エピローグに向けて

陽平の言っている意味がわからないまま、ついに水曜日を迎えた。

その日はバイトの出勤日である。

千広はバーカウンターで陽平の言葉の意味を考えていた。

陽平はエピローグに向けて、何をすると言うのだろうか。

そう思っていたら、ドアのベルが鳴った。

「いらっしゃいませー…」

入ってきた客は、麻里子だった。

陽平の見合い相手で、銀行のお偉いさんの娘の麻里子である。

その隣にいるのは、父親だろうか。

白髪の髪を後ろに流し、高そうなスーツを着こなしている。

躰から出てくる濃い雰囲気が、麻里子とよく似ていた。

「アマネで予約したんですが、アマネさんはまだきていませんか?」

彼女の父親が聞いてきたので、
「はい、まだです」

千広は答えた。

陽平の言う通りだった。
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