嘘婚―ウソコン―
またドアのベルが鳴る。

今度は、陽平の父親が入ってきた。

「いやあ、遅れてすみません」

麻里子の父親の顔を見ると、陽平の父親はあいさつした。

「いえいえ。

ところで、陽平さんは?」

麻里子の父親が辺りを見回した。

千広も陽平がいないことに気づいた。

てっきり父親と一緒にくると思っていたのに、陽平はどうしたのだろう。

「ちょっと仕事が押しているらしくて、もうすぐくると…」

陽平の父親がそう説明した時、またドアのベルが鳴った。

入ってきたのは、
「どうも、遅れてすみません」

陽平だった。

「ああ、全員そろったみたいっすね」

そう言って、陽平は千広を含めるこの場にいる全員の顔を眺めた。
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