嘘婚―ウソコン―
その場がざわついた。

(今、何て言ったの…?)

千広は異国の言葉を聞かされたような気分だった。

今、陽平の唇から放った言葉が信じられない。

「ど、どう言う意味だ!?」

平静を装って自分の息子に問いかける父親だが、さすがに動揺までは隠し切れていない。

そりゃ、そうだろ。

いきなりの婚約破棄宣言に戸惑うのは、当然のことだろう。

しかも、婚約破棄する理由がわからない。

陽平は呆れたように息を吐いた。

それが演技だと言うことが、千広にはわかった。

「だって、この人たちは俺たち家族に借金を押しつけようとしてるんですよ?」

そう言った陽平に、三橋父娘はビクッと躰を震わせた。
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