嘘婚―ウソコン―
「俺の財産目当てで近づいてきたヤツが何を言ってやがる。

そんなドロボー猫に渡す愛もなきゃ、金もねーよ。

頭が悪いんじゃねーの?

ああ、お嬢様だから頭が悪いのは仕方ないことか」

陽平が笑いながら言い続けた。

今度は、言い返すのが無理らしい。

返す言葉がない麻里子はうつむいた。

彼女の膝のうえに置いている手が震えている。

「陽平もこう言っていることですし、この話は白紙に戻します」

陽平の父親が腰をあげた。

「んじゃ、これで失礼します。

まあ、自分の行いを反省するんですね」

陽平は三橋父娘をバカにするように言うと、腰をあげた。

周親子は背中を見せると、その場を去る。

千広は2人の後を追った。
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