嘘婚―ウソコン―
その行動に、
「なっ…!」

陽平は目を見開いた。

封筒ごと、千広が離婚届を破いたからだ。

「あたしの気持ちはどうなるって言うんですか!?」

千広は叫んだ。

「……はっ?」

陽平は訳がわからない。

つまり……傷ついた、ってこと?

躰じゃなく、心が。

もちろん、悪かったとは思っているのだが…。

震える千広の唇が、開く。

「――あたしの……あたしの周さんに対する気持ちは、どうしろと言うんですか?」

千広の目から、涙がこぼれた。

「――あたし………あたし、周さんが好きかも知れないんです……」
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