嘘婚―ウソコン―

*さよならは言わない

離婚届を出し、お盆休みも終わった。

後は後期の授業の最初に提出するゼミのレポートを書きながら、夏休みが終わるのを待つだけだ。

そんな、8月も終わりに近づいてきた夜のことだった。

「カンパーイ!」

千広と陽平の声が事務所に響いた。

同時にガツンと、2つの缶チューハイが重なった。

千広と陽平は2人でパーティーをしていた。

テーブルのうえには、先ほどスーパーで買ってきた缶チューハイとケンタッキーのフライドチキンと宅配ピザが置いてあった。

宅配ピザはマリゲリータとミックスのハーフ&ハーフだ。

パーティーの内容は、9月の陽平の旅立ちだ。

千広はチューハイを1口飲んで、
「ここじゃなくて、『Cinderella』でもよかったんじゃないんですか?」
と、言った。

「ここは俺のスタートラインだからな」

陽平はチューハイをテーブルのうえに置くと、マルゲリータのピザをかじった。

「ハートさんやユメさんに祝って欲しかったんじゃないんですか?」

千広はフライドチキンをかじった。
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