嘘婚―ウソコン―
意外な顔して聞いてきた千広に、
「自分の金くらい、自分で稼いでるに決まってるだろ。

俺だって人間だ。

財閥の御曹司をバカにすんな」

陽平はそう返した。

言い返した声と表情は特に変わりはないが、心の中では怒っているのかも知れない。

そう思うと千広は申し訳なくなり、
「すみません…」

謝った。

「いや、謝らせたかった訳じゃないんた」

謝罪した千広に陽平は呟くように言って、テーブルに置いていたチューハイを飲んだ。

フライドチキンに手を伸ばすと、それをかじった。

「昔からずっとそうだったんだよ」

フライドチキンを飲み込んだ後、陽平は言った。
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