嘘婚―ウソコン―
「うちは…財閥とは言っても、所詮は成金なんだ。

『周財閥』はじいさんが戦後に一代で築きあげてきた会社だったんだ。

じいさん、結構庶民的な考えの人でさ、まあ何つーの?

働かざる者食うべからず的な考え方の人でさ…まあ、今思うとじいさんは戦乱の世の中を生き抜いてきた訳だから、そんな考えを持つものなのかも知れねーけどな」

ハハッと笑って、陽平はチューハイを1口飲んだ。

「子供の頃はバイトなんてもちろんできやしないから、お袋のお手伝いとかいろいろしてこづかいを稼いでた。

高校に入ってからはバイトして自分の金を稼いでたけど」

陽平はおもしろいのか、フフッと笑った。

「お金持ちも、楽じゃないんですね」

千広は呟くように言った。
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