嘘婚―ウソコン―
その言葉に陽平は笑って、
「楽じゃないぜ。

でも俺はじいさんの教育方針でよかったと思ってるけどな。

いくら金があったって、本当に欲しいものは手に入らないし」

最後のところは、呟いていた。

過去のことを思い出したのかも知れない。

千広が何も返さないでいると、
「悪ィ、何か…しんみりさせちまった」

陽平は悪かったと言うように左手を前に出した。

「せっかくのパーティーだって言うのに、悪ィな」

陽平はチューハイをあおるように飲んだ。

その様子に千広は酔っているのかも知れないと、思った。

「旅立ちくらい、明るい方がいいのにな。

全て解決した訳なんだし」

陽平は自嘲気味に笑った。
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