嘘婚―ウソコン―
「いっそのこと、全部話した方が楽になると思いますよ」

自嘲気味に笑う陽平に、千広は言った。

陽平が驚いた顔で千広を見つめる。

沈黙。

長い沈黙が2人を包み込んだ。

その沈黙を先に破ったのは、
「…すみません、言い過ぎました」

千広の方からだった。

千広は呆れたと言うように息を吐いて、前髪をかきあげた。

「ようやく20歳になったばかりの小娘が、何を大きな顔でえらそうに言っているんだって言う話ですよね。

あたし、余計なことを言い過ぎました」

今度は千広が自嘲気味に笑う番だった。

「この前だって、初めてリストラを経験したばかりだって言うのに…」

「ヒロでよかったよ」

独り言を呟く千広に、陽平がさえぎった。
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