嘘婚―ウソコン―
「えっ?」

前触れもなく、いきなりそんなことを言った陽平に千広は戸惑った。

あたしでよかったって…どう言うこと?

「ヒロだったら、俺がいない間の事務所を安心して任せられる。

もちろん、ヒロは素人だから大きなことは小田切さんに任せるさ。

でも、事務所の留守番はヒロに安心して任せることができる」

酒の力も手伝ってなのか、饒舌に話す陽平に、千広は照れ臭さを感じた。

「安心してって言いますけど、周さんが帰国した時に事務所が絶対に残っているとは限りませんよ?

あたしが潰しちゃう可能性もあるんですからね?

わかってます?」

照れ臭いのを陽平に悟られないように、千広は言い返した。

しかし、返ってきたのは息の音。
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