嘘婚―ウソコン―
陽平はテーブルに顔を突っ伏していた。

「……寝てんのかよ」

千広は呆れた。

照れ臭いと思っていた今の時間を返して欲しいと、千広は思った。

「何いいこと言ってくれちゃってんのよ。

って言うか、チューハイ2本飲んだだけなのに寝るか」

寝顔の陽平に向かって毒づいた千広だが、陽平の酒の弱さを思い出した。

(そう言えば、初めて『Cinderella』に連れて行かれた時、水割り3杯で泥酔状態になっていたっけ…)

千広はテーブルのうえに視線を向けた。

冷めたフライドチキンとピザがまだ残っていた。

「あたし、こんなにも食べられないっつーの」

寝顔の陽平に一言毒づくと、冷めたピザを手に取った。

当たり前だけど、冷たい。
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