嘘婚―ウソコン―
自分で言うのも何だが、妻に選んだ相手が自分でよかったと思う。

戸籍を盗み、妻にした相手がもし他の人だったら…訴えられていたかも知れない。

でも陽平だったら、いつもの飄々とした態度で返す…ような気がする。

千広は最後の1口になったピザを口に入れた。

すっかり冷めてしまった食事には手を伸ばせなかった。

代わりに残っていたチューハイでお腹を満たすことにした。

陽平の寝顔を観察する。

赤茶色の短い髪。

髪の色が赤茶色なのは、生まれつきなのだろうか?

「染めてるなんて聞いてないしな…」

千広は空っぽになった缶を手の中で弄んだ。

袋の中にチューハイはまだあるけれど、次を飲む気はなかった。
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