嘘婚―ウソコン―
今無理して聞いても、陽平はきっと飄々とした性格ではぐらかすことだろう。

千広は寝顔を見つめた。

「周さん、あたしはさよならなんて言いません」

寝顔に向かって、千広は言った。

「また会えるんだったら、さよならを言う必要なんてないと思うんです。

だから、言いません。

だけど…」

眠っている陽平が、自分が今言っていることを聞いていないかも知れない。

でも、もし聞いていたら…と、そんな思いを込めて話を続けることにする。

「また会ったら、あたしが聞きたかったことを全部答えてもらいますからね。

あたしだって、いつまでもあなたの飄々としたペースに振り回される訳にはいかないんですから」

そこで終わると、千広は陽平の寝顔に向かってあかんべーをした。
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