嘘婚―ウソコン―

*証拠と根拠

時間は午前11時30分を少し過ぎていた。

千広は陽平の事務所に向かっていた。

その日の天気は曇りだった。

だけど、気温はジメジメと、一言で言うならば蒸し暑かった。

太陽が出ていた方がまだずっとマシだと、千広は心の中でぼやきながら歩いていたのだった。

曇りだから少しは涼しくなるかと思ったら、昨日とたいして変わらなかった。

千広は先ほどマックで買ってきた差し入れ――陽平の昼食を右手から左手に持ち替えた。

陽平の事務所が見えてきた。

「んっ?」

その前に、2人の人影がいた。

1人は赤茶色の短髪、陽平だ。

もう1人は…女性だった。

後ろ姿だから顔は見えない。

黒髪のボブに、金色のメッシュが入っていた。
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