嘘婚―ウソコン―
「周さんの仕事の関係者か誰かかと思いましたし…」

そう言った千広に、
「それは違うね」

陽平は首を横に振った。

千広は首を傾げる。

陽平は、
「ここじゃマズいし、暑いから中で話さない?

食べ物をあんまり外に出していると、腐っちゃうし」

千広が持っているマックの差し入れを指差した。

「そうですね」

千広が返事したことを確認すると、陽平と一緒に事務所に入った。


クーラーが効いている部屋で陽平と一緒にマックを食べる。

ドリンクは氷が全部溶けて、すっかり水っぽくなっていた。

「5年前――婚約者が俺以外の男と一緒に駆け落ちした、と言う話はこの前したよな?」

そう言って陽平は味が薄くなり、炭酸がなくなったコーラをストローですすった。

「ええ、聞きました」

千広はうなずいて、同じく味が薄くなったアイスティーを口に含んだ。

水っぽくなったアイスティーは、お世辞にも美味しいとは言えなかった。
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