嘘婚―ウソコン―
陽平はもう飲みたくないと言うようにコーラを床のうえに置くと、
「実はその話にはまだ続きがあるんだ」
と、呟くように言った。

「えっ?」

千広は驚いて聞き返した。

続き?

ハートから聞いた話では、あれで終わりかと思っていた。

だけど、その話にはまだ続きがあるなんて…。

千広は何も返せなかった。

陽平は自嘲気味に笑って、
「結納まで交わした婚約者に逃げられた俺のその後は…まあ、一言で言うなら“荒れていた”だな。

弱いくせに酒を飲み過ぎて、病院に運ばれるのはほぼ毎日。

『Cinderella』にだって、毎日のように通ってた。

仕事だって入院と退院の繰り返しで、あまり行っていなかった」

自虐的に話した。

「そんなヤツ、クビにして見捨てても当然なのに…。

小田切さんとハートとユメが俺を支えてた。

彼女たち3人以外にも、そんな俺を支えていた人物がいたんだ」
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