嘘婚―ウソコン―
千広は衝撃のあまり、何も返すことができなかった。

首を動かして、相づちを打つこともできない。

「それが、あいつ。

今俺と話をしていて、ヒロが見ていた彼女だ。

名前は、森川友美(モリカワトモミ)。

年齢は…確か、俺の1個か2個上だったと思う。

彼女は『Cinderella』のスタイリストだったんだ。

今は女優のスタイリストやってるって。

彼女が言うには、『Cinderella』のスタイリストを辞めたのは俺が原因だって」

陽平は息を吐いた。

「さっきも言った通り、その当時の俺は荒れていた。

あの時も半分は勢い、もう半分はヤケクソ…そんな感じだった。

その日も、死ぬかと思うくらいに『Cinderella』で酒を飲んでた」

そこまで話して、陽平は思い出すように目を閉じた。
< 249 / 333 >

この作品をシェア

pagetop