嘘婚―ウソコン―
出てきたとしてもそれは何だったのだろう。

千広はアイスティーをすすった。

当然、アイスティーは味がない。

ガムシロップとレモンも入っていることは入っているのだが、それすらもないかと思うくらいに味がなかった。

陽平は、
「目が覚めたらそんなシチュエーションで、そのうえ記憶も全くないし。

何かもうよくわからなくて、モミが眠っている間に服を着て、ホテルの部屋から逃げ出した。

それがきっかけで荒れていた生活から脱出できた訳だけど、すぐにだったな。

モミが『Cinderella』を辞めたのは。

俺と顔をあわせるのが嫌だから辞めたのが理由かも知れないけど、本当は…妊娠していたのかも知れない」
と、話を続けた。

「…ど、どうして、ですか?」

千広は問いかける。

「モミの子供の年齢が5歳だっつってたから。

一応話としては辻褄(ツジツマ)があう訳なんだけど…証拠が見当たらない。

血液型が一緒なだけじゃ、何の根拠にもならなければ何の証拠にもならない」

陽平が言った。
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