嘘婚―ウソコン―
じゃあ…話せばわからない人間だったら?

わからなかったら、自分は…。

千広は、自分が明日の新聞の一面を飾っているところを想像した。

「き…きゃーっ!」

千広は家路に向かって走り出した。

人間と言うものは不思議だ。

恐怖を感じると、普段よりも早いスピードで走ることができるのだから。

そんなことを思いながら、千広はアパートの階段をかけあがって、我が家へ飛び込んだのだった。


ふとんを頭からかぶって一夜を迎えた。

千広は洗濯物をベランダに干しながら周りを警戒していた。

怪しい人影はいない。

下着は普段から部屋の中で干しているから無事だ。

「液体洗剤万歳!」

洗濯物を全部干し終えると、千広は両手をあげた。

液体洗剤は水で洗ってもよく溶けるうえに、部屋干ししても部屋干し独特の生臭い匂いがしない。
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