嘘婚―ウソコン―

*小田切さん

9月に入った。

千広と陽平は空港のターミナルにいた。

「あたしだけでよかったんですか?」

千広は言った。

「ハートとユメはこの時間帯は寝ているんだ」

陽平は腕時計を見せた。

腕時計は8時30分を差していた。

彼が身につけている腕時計は、庶民の千広でも知っているブランドのものだった。

陽平曰く、妹が誕生日プレゼントにくれたものらしい。

「あいつらからして見れば、朝=夜だ」

陽平は足元のリュックを背負った。

「まあ…そうですね」

千広は納得がいかないと言うように呟いた。

「その様子だと、どうやら納得していないみたいだな」

千広の様子を見抜いたと言うように、陽平が言った。
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