嘘婚―ウソコン―
「だって…周さんと一緒に過ごしたんだから、お見送りくらいはしても」

そう言った千広に陽平は笑った。

「俺は、ヒロだけで充分だよ」

ポンと、千広の頭に手を置いた。

「未来の右腕候補が見送ってくれてるんだ、俺はそれで充分だ」

「…それ、ハートさんとユメさんが聞いたら怒りますよ？」

そう言った千広に陽平は苦笑いをした。

「絶対あいつらに言わないでくれよ？」

陽平が言い終わったとたん、ターミナル内にアナウンスが流れた。

そのアナウンスには陽平がこれから乗る飛行機の名前が入っていた。

「そろそろ時間見てーだな」

陽平はキャリーバックの取っ手を持った。

「じゃ、留守番頼んだぞ」

陽平が手をあげた。

「行ってらっしゃい、周さん」

そう言った千広に陽平は笑うと、背中を見せた。
< 278 / 333 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop