嘘婚―ウソコン―
陽平が歩き出す。

千広は、彼の背中が見えなくなるまで見送った。

空港の外に出ると、飛行機のエンジン音が聞こえた。

千広は空を見あげた。

空には飛行機雲が残っていた。

「周さん、もう行ったのか…」

千広は飛行機雲を見つめた。


その日の夜。

「小堺さん、今までご苦労様でした」

大前から給料袋を渡された。

「ありがとうございます」

千広は頭を下げると、大前から給料袋を受け取った。

2ヶ月間働いたバイト先『鉄板ディナー・綾部』を退職した。

バイトが終わると、千広は歩道橋をのぼった。

(ここを渡るのも、今日で最後か…)

千広は、陽平がいつもいた場所に歩み寄った。
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