嘘婚―ウソコン―
小田切が考えている時間は、そんなにも長くなかったと思う。

「実は…私の事務所でバイトしていた子がいたんだけど、先月の終わりに訳あって辞めちゃったの。

あなた、どう?

勉強も兼ねて、私のところで働いてみない?」

「えっ…」

そう言った小田切に、千広は驚いた。

(小田切さんの事務所に、あたしが…?)

「週に2回でどう?

まあ、小堺さんはまだ学生だから、バイトのスケジュールはあなたにあわせるわ。

それでどうかしら?」

顔を覗き込むように小田切が見つめる。

「いいん、ですか?」

千広は尋ねた。

「もちろんよ、それなりに給料は出すわ。

私の事務所はホワイト企業だから、安心して。

定時で家に帰らせてあげるから」

小田切は笑った。
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