嘘婚―ウソコン―
「じゃあ、働きます」

千広は答えた。

「じゃあ、って…」

小田切はクスクス笑ったが、
「決まりね。

その代わり、バイトだから言う理由でって私は甘やかさない主義だからね?

それくらいは覚悟して、しっかりと働いてちょうだい」
と、言った。

「はい」

千広はうなずいた。

「じゃあ、私はそろそろこれで」

小田切は腰をあげた。

「えっ…もう帰るんですか?」

そう言った千広に、
「最初に言ったでしょ?

私はあなたの顔を見にきたって」

小田切が返した。

確かに、小田切はそう言っていた。

「じゃあ、バイトのスケジュールは…来週、また話しあいましょう」

「はい、わかりました」

千広は返事すると、小田切と一緒に玄関に向かった。
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