嘘婚―ウソコン―
千広は生クリームたっぷりのココアを1口飲んだ。

甘いチョコレートの味が口の中に広がって、躰をホッと温めてくれた。

「よし」

千広は気合いを入れると、勉強に取りかかった。


腕時計を見ると、5時を差していた。

「もうこんな時間か…」

勉強を始めた時間は2時少し過ぎたところだったのに、時間の流れは早いものだ。

窓から空を見あげると、すっかり日が暮れていた。

勉強もキリがいいところで終わった。

「さて」

遅くならないうちに早く帰ろう。

マグカップの底に残って、冷たくなっているココアを飲むと、千広は帰り支度を始めた。

その時だった。

「あいつも出世したもんだな」

聞き覚えのあるその声に、千広は手を止めた。
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