嘘婚―ウソコン―
陽平デザインのネックレスは彼女に買われた。

そのネックレスは、きっと彼女の“大切な人”に送られることだろう。

千広は街を歩いた。

立ち止まって、空を見あげた。

陽平も、今この空を見ているのだろうか?

「周さん、あなたのネックレス売れていますよ。

あなたが名づけた“大切な人へのクリスマスプレゼント”のネックレスが」

陽平に話しかけるように、千広は言った。

また歩き出そうとした時だった。

「あっ…」

千広はまた空を見あげた。

空から、
「雪…」

雪が、降ってくる。

千広は微笑んだ。

「明日、積っているといいなー」

通学や通勤は大変かも知れないけど、この雪が明日には積っているといいなと思った。

そう思いながら、千広は家路へ向かった。
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