嘘婚―ウソコン―
Ending
大学4年生の夏休み。

千広はパリに訪れていた。

「んー」

日本とは違う空気に、千広は大きく深呼吸をする。

生まれて初めての1人旅だ。

同級生たちは就活で大忙しだけど、すでに就職が決まった彼女は長い夏休みを利用してに旅行にきていた。

就職先はもちろん、陽平の事務所である。

彼が旅立つ前、もし千広が自分の事務所に就職することがあるなら正規として雇って欲しいと、小田切に頼んでいたらしい。

千広がそれを知ったのは、今年の春に小田切の事務所へ履歴書を持って面接に行った時、彼女から話を聞かされた。

「ホント、あの人ってわからないんだから」

飄々としているくせに、変なところではしっかり――いや、ちゃっかりとしている。

でも、嬉しいのは事実だ。
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