嘘婚―ウソコン―
陽平と再会できるその日まで、彼の事務所で働くことを望んだのは自分だ。

もしかしたら、そこに彼が帰ってくると思ったから。

確信はできないけど、何だかそんな気がした。


「それにしても、やっぱりすごいなあ…」

さすが、パリの街並みだ。

絵葉書やテレビで見たことはあるが、自分の目で見たのは初めてだ。

そんな街並みの中、陽平は一体どこにいるのだろう?

千広は立ち止まり、空をあおいだ。

エッフェル塔と視線がぶつかった。

陽平は、もうエッフェル塔を見たんだろうか?

そう思ったその時だった。

カシャッ

突然、シャッター音が聞こえた。

その音に、千広は視線を向ける。

そして、驚いた。
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