嘘婚―ウソコン―
そこにいたのは、
「よっ」

カメラを片手に笑っている最愛の人だった。

ずっとずっと、会いたく仕方がなかった人だ。

「――周さん…」

彼を呼んだその声は、震えていた。

陽平が歩み寄る。

「少し大人っぽくなったんじゃないか?

ヒロ」

ああ、懐かしい。

自分の名前を呼ぶ声も、飄々としたその雰囲気も、全然変わっていない。

「もうヒロも4年生だしな、当たり前か。

少し変わった方がいいもんな」

優しく微笑んだと思ったら、頭をなでられる。
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