嘘婚―ウソコン―
首と脇を拭いた後、おしぼりを洗濯機に放り投げた。

キレイな弧を描いたおしぼりは、キレイに洗濯機の中に入った。

それを見送った後で、新しいTシャツに着替えると準備が完了した。

ショルダーバッグの中に財布と携帯電話とメモ帳とボールペンを入れた。

肩にバッグをかけて、音楽プレイヤーを手に持てば、出かける準備は万全だ。

「行ってきまーす」

黒い革靴を履くと、千広は家を出た。

夕方なのに、まだ日は照っている。

じめじめとした空気は、まだ梅雨明けを迎えていない証拠だ。

千広はイヤホンを耳にかけた。

曲を選んでいる時、ショルダーバッグの中の携帯電話が震えていることに気づいた。

「誰だろ?」

携帯電話を取り出して確認をして見ると、電話の着信がきていた。
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