嘘婚―ウソコン―
時すでに遅しである。

流れたのは機械音だった。

「もう!」

千広は両手で頭を抱えた。

完全に巻かれてしまったうえに、陽平のペースに飲み込まれてしまった。

そして、うまくごまかされた。

千広は悔しさをぶつけるように、携帯電話を枕に投げつけた。


陽平は携帯電話を閉じた。

マルボロのタバコに火をつけると、煙と一緒に息を吐く。

「――なかなかおもしろいヤツじゃん、小堺千広」

陽平はクスッと笑った。

彼女の名前を使って勝手に籍を入れたけど、当の彼女はなかなかおもしろい。

どこで自分の電話番号を調べたのか…その件の質問は、また彼女に会った時に聞いて見よう。

「離婚は、まだなしだな」

そう呟いて、陽平はタバコを口にくわえた。
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