嘘婚―ウソコン―
「とりあえず、何か出してくれる?

喉が乾いた」

陽平はカウンターに肘をついた。

「何か出してって、あたしたちは夫婦じゃありません」

「夫婦じゃん」

陽平は得意気に笑いながら言った。

まるで当たり前だと言うような態度がムカついた。

「けど、それは紙のうえで成り立ってる関係じゃないですか。

基本、あたしたちは夫婦じゃありません」

「まあ、言えてるかもな。

所詮は紙のうえの関係だからな」

紙のうえの関係――間違っているのかと問われれば、そうじゃない。

むしろ、正解だ。

自分たちは紙のうえの夫婦で、形だけの関係の夫婦だ。

そこに愛情も涙もない。
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