嘘婚―ウソコン―
千広が息を吐いたのと同時に、
「ジンジャエール」

陽平が言った。

「えっ?」

「だから、ジンジャエール。

あるんでしょ?」

そう言って指を差したのは、さっき開けたジンジャエールのビンだった。

「…かしこまりました」

こんなヤツに敬語を使いたくない!

むしろ使う価値がないと言った方が正解だ。

千広はそんなことを思ったが、相手が客である手前、どうしても使わなければならない。

出していたジンジャーエールのビンを片づけると、冷蔵庫からよく冷えた新しいジンジャエールのビンを取り出して、グラスに氷を入れた。

栓を抜くと、グラスにジンジャエールを注いだ。
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