嘘婚―ウソコン―
空を見るのは久しぶりだ。

最近は忙しくて、全くと言っていいほどに空を見ていなかった。

「帰ろ」

千広はそう呟くと、歩き出した。

道路と道路の間を挟むようにある大きな歩道橋がある。

この歩道橋を越えると、駅に到着する。

それをのぼり終えたのと同時に、歩道橋の真ん中に誰かがいることに気づいた。

その人も、さっきまでの自分のように空を見あげていた。

その顔を見てみたら、
「――ゲッ…!」

千広は目をそらした。

その人は…会いたくない相手こと周陽平だった。

陽平の視線は空に向けられている。

今ここで関わったら厄介だ…と言っても、駅までの道はここしかない状況である。

何より、躰が疲れているので遠回りして帰りたくない。

そんなことを思っていたら、陽平が千広に視線を向けた。
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