嘘婚―ウソコン―
「よっ」

関わってしまった。

「…こんばんは」

会釈した後、千広はうつむいた。

ここは適当にやり過ごすしかない。

千広はうつむいたまま、この場を去ろうした。

「離婚」

陽平が呟いたのと同時に、千広は歩き出そうとしていた足を止めて彼に視線を向けた。

もしかして、その気になったのだろうか。

「する気ないから」

自分が顔をあげるのを待っていたと言うように、陽平が笑った。

「なっ…!」

それに対して期待してしまったことを後悔した。
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