嘘婚―ウソコン―
千広が言いたいのは、自分の手で周陽平と離婚をすると言うことである。

「それで離婚届ある?

それを突きつけて、離婚を要求してやるの!」

単純過ぎて笑えなかったと言うのは、ここだけの秘密だ。

それで離婚できるなら、今の今まで悩んでたのがバカバカしい。

悩んでいた時間を返せとツッコミたくなった。

身寄りのいない老人の戸籍を探していた時間を返せとツッコミたくなった。

「…ああ、そう」

引きつった感じを肌で感じながら、園子は何とか笑った。

自分の仕事そっちのけであちこちから戸籍を引っ張り出していた自分は一体何だったのだろうか?

「頑張ってね」

呆れているのを隠しながら園子は言った。

「頑張るわよ、それで今から…」

ブツッと、何故かそこで電話が切れた。
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