嘘婚―ウソコン―
子機が盗られた。

千広が後ろに視線を向けると、
「あっ…」

顔が青ざめた。

「勝手にお店の電話を使わない」

大前の手には子機が握られていた。

「…すみません」

千広は小さくなって謝ることしかできなかった。


とりあえず離婚届を持って、園子は千広のバイト先を訪ねた。

顔を出すと、バーカウンターにいる千広がヒマを持て余していた。

あまりにも退屈であくびをしたら、
「あくびがデカい」

突然声をかけられたものだからビックリしてしまった。

視線を向けると、
「園子」

仕事帰りと言うこともあり、スーツ姿の園子がそこにいた。
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