嘘婚―ウソコン―
違っていたら…?

自分が今まで聞かされていた赤い糸の話がもし違っていたらと言うことを言っているのだろうか?

陽平は何が言いたいのだろう。

「…何が言いたいんですか?」

思ったことを千広は聞いた。

「こう言うこと」

陽平が笑ったと思ったら、
「――ッ…!?」

その顔が間近にあった。

お互いの額の距離、今にもくっつきそうなくらいに近い。

「――なっ…!?」

何ですか!?

あまりの距離に、千広は思わず離れようとした。

しかし、
「――ッ…」

逃がさないと言うように、陽平の指が千広のあごをつかんだ。

陽平の整った顔は目の前である。

黒いビー玉のような瞳は、ゾッと背筋が凍るくらいにキレイだった。

表向きは飄々としていて、ミステリアスなのに。
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