FeeLiNg.




いつも帰るときに思う。

夕焼けがきらい。
何もかも呑み込んでしまいそうで。
綺麗なんかじゃない。
私には汚く見える。
青色をどんどん隠していくから。
隠していって、最後には黒に染める。




怖い。




「まり。」

後ろから声がした。
胸が潰れるほどに聞きたくない声なのに。
「…拓人。」

「どこみてんの?空?」

「…うん。」

私の隣にきて、笑顔で、楽しそうに。

「綺麗だよな。」

昔から夕焼けが好きだったよね。
私も、昔好きだった。

オレンジに光るあなたの笑顔が
いつか黒に染まってしまうんじゃないか
そう考えて、怖くなる。

「なあ、今日の夜空いてる?」

「…なに?」

「星みようと思って。」

急すぎる誘いはいつものことで。
でもそんなとこもきらいじゃない。

「…どうして?」

「理由ってないとだめ?
いいじゃん。9時になったら
迎えに行くから。」

強引なところも昔から。
なんにも変わってない。





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