【短編】君に恋をした。
中に入っても相変わらず豪華な家だったけど、俺はそんな事既にもう、上の空な気分になっていて、自然と母の手伝いをする神木 紗耶香を目で追っていた。
みんなのビールを注いだり、料理を分けたり、ちょこまかと動き回る姿がどうしようもなく、可愛かった。
初めて、自分から、女に話しかけたい、と強く思った。
だけど、上司の大切な娘。
簡単に手を出していい相手じゃないことは、分かってた。
自分が自分じゃないみたいで、ひどく気持ち悪い気がした。