不器用な恋模様
そんな時だった。
「ひ、氷屶くん」
ちょっと遠慮しがちな声が
暁助の声より耳に届いた。
それは
とても聞き覚えのある声。
「……栞」
俺はポツリと呟いた。
帆波 栞(シオリ)。
おとなしめで気遣いが上手い、
俺の幼なじみ。
すると栞が後ろで組んでいた手を前に出した。
その手には弁当箱…。
その弁当箱は
明らかに男物で、俺はピンときた。
すると栞が
俺に近づいてくる。
そして優しく微笑んだ。