7 STARS
頭に置かれた手が、夢の頭をぎこちなく撫で始める。
優しいその手つきに安心感はさらに増す。


「結局さ、何度絶望したって希望を捨てることができないのと同じ論理だと思うんだ。」

「…どういう意味…?」

「生きてる限り、望みを持ち続けるのが人間だろ?
中には途中で絶望に負けてしまう人もいるけど。
それでも大半の人間は今日辛いことがあっても明日は違うかもしれない、そんな根拠のないことを思いながら生きていく。
愛もそれと同じなんじゃないかって思うようになってきた。」

「え…?」

「愛されなくても愛していなくても、愛されることも愛することも諦められない。
人間ってそういうものなんじゃないかって。
それが今のところの俺の仮説。」

「じゃあ…諦めなくていいの…?」

「諦める必要がどこに?」

「だって諦めないと…辛い。」

「諦めたって辛いよ。
だって一生人と繋がらないで生きていくってことだもん。
それに夢の年で諦めるのはまだ早い。」

「だってずっと…ずっと辛くてっ…。」

「そうだね。
留守電のボタン押す顔、いつも哀しそうだった。」

「愛だって良く分かんないけど…独りは嫌…もう嫌だよ…。」


ずっとずっと、積み上げてた気持ち。
独りは嫌だった。
誰もいない部屋。鳴らない電話。広すぎる空間にたった一人、小さな自分。


ずっと嫌だと思っていた。
でもそれを口にすることは出来なかったのに。

< 113 / 268 >

この作品をシェア

pagetop