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金曜日の最終電車の1本前の電車に乗って、奏人は戻ってきた。
いつも通りの優しい表情を浮かべて。


「ただいま。」

「おかえり。長旅お疲れ様。」

「俺が金をケチって長旅になってるだけだし。」

「時間でお金買うほど裕福じゃないもんね。」

「ま、そういうこと。
それより悪いな、いつもいつも。」

「ううん。平気。」


運転席に私が、そして奏人が助手席に乗り込んだ。
エンジンをかけ、ブレーキペダルから足を離した。


「あ、車さ、菜々子んちで置いていいよ。菜々子んちから歩くからさ。」

「えーいいよー家までちゃんと送ってくよ?」

「ちょっとさ、歩きたくて。」

「え?」

「やっぱり実家の空気って特別だからさ。
空気美味しいし、空も綺麗だし。」

「どんだけ汚いのさ、都会は。」

「便利な分だけ汚いよ、環境は特にね。」


どこか疲れたようにそう笑って、奏人は窓の外を見つめる。


「星が本当によく見える。」


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