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絡み合う指先から奏人の熱が伝わって、安心する。
そう言えば、あの思い出の日も手を繋いでいた。


繋がなくなったのはいつからだったんだろう。
繋げなくなったから繋がなくなったのかもしれない。
きっとその時から、怖くなったんだ。


「こうして手を繋ぐなんて、子どもの頃以来だよね。」

「…うん。」

「あの頃はあんなに素直に生きていたのに、大人になるとダメだね。
手に入れる喜びよりも失う怖さが先に立つようになっちゃって。」

「そうなんだよね…どうしてなんだろう。
ずる賢くなっちゃうのかな。失うことがとにかく怖くて、だったら今のままでいいって現状に甘えちゃって、ずるずると…。」

「大人になると、子どもの時出来ていたことがどんどん出来なくなるなぁってすごく思うよ。
実習中だって、子どもたちを見ててそう思った。」

「子どもたち?」

「うん。子どもってね、本当に素直なんだよ。
感情もすぐ表情に出るしね、言葉も回りくどさを知らないからストレートなんだ。
でもね、子どもは大人が思っているほど子どもでもないんだ。」

「…どゆこと?」

「菜々子と喧嘩別れみたいになった日の2日後から実習が始まったけど、正直気持ちが実習よりも菜々子に向いてて。
多分自然とため息とかついちゃってたんだと思う。
子どもに言われたよ。『先生、お顔が暗い』ってね。」

「へぇー…子どもってすごい…。」

「うん。大人になるっていいことばかりじゃないよ。」


私は小さく頷いた。

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