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「…久哉がね、あの時こう言ったんだよ。
『恋愛は相手の将来を奪うためにあるんじゃない』ってね。」

「え…パパがそんなこと?」

「うん。久哉もたまにはそういう真面目なこと言うんだよ。」

「似合わなーい!」

「こらこら。
でも、その言葉にちょっと目が覚めた気がしたんだ。
大学っていう進路を決めるのは自分。
それで、その先の進路を決めるのも自分だから。」

「その先?」

「うん。
どうしてもね、やっぱりずっと傍にいて卒業ってなると寂しいんだよ。
だから、傍にいられれば本当はすごくいいのかもしれない。
だって会いたい時に会えるし、寂しい想いをすることもさせることもないんだから。
でも、その目先の寂しさに潰されてて…いいのかなって。」

「目先の…寂しさ…。」

「俺はあの頃からずっとはるのことが好きで、それはずっと変わらないって思っていたし、実際今まで変わることがなかったよ。
離れていた時間、ずっと。」


陽パパの目がいきなり真剣なものに変わる。


「寂しい、会いたい、抱きしめたい。
そんなこと、離れていた間にどれだけ思ったか分からないよ。
それでも…その先を思えば耐えられた。
というか、離れることを決めたのは俺だったから弱音を吐くわけにはいかなかったけど。
…はるもよく耐えてくれた。」

「…はるママ、いっぱい泣いた?」

「たくさん我慢してたけどね。それでも俺がそばにいるときは泣かせてあげたよ。他の男の前で泣かれちゃたまんないし。」

「不安…なかったの?」

「なんの不安?」

「浮気されちゃう…とか、離れてることの…不安。」

「ない、って言ったら嘘になっちゃうけど…。」


そう言って陽パパは一息置いた。

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